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 神戸市消防局公式サイトに掲載されている災害協力シミュレーションゲーム 「ダイレクトロード」開発者の個人サイトです。 公式サイトでは説明しきれないゲームの詳しい進行方法や作成理念、プロトタイプゲームなどを掲載しています。 当サイトに掲載している内容については、神戸市消防局は一切関知しておりません。

災害協力シミュレーションゲーム ダイレクトロードとは

協力の中に道は開ける・・・
 ダイレクトロードは、巨大地震発生直後の1時間という人が最も命を落とす可能性が高い切迫した状況を疑似体験しながら、その場に居合わせた人たちが協力して、「避難を呼びかけること」「ケガ人に応急手当を施すこと」「火事を消すこと」「閉じ込められた人を助け出すこと」など、具体的な状況に具体的に対処する方法の修得を目的として、6人1チームとなって他チームとクリア時間を競い合うカードゲーム型の防災訓練教材です。

神戸市:災害協力シミュレーションゲーム ダイレクトロード
神戸市自治体サイト

 現在、神戸市消防局公式サイトに 「海辺の町」、「内陸の町」、「海辺のマンション」を公開しています。このサイトでは、更に「内陸の町BRplus」、「頭の中」、ダイレクトロードに付加する「疑似喪失体験」のシナリオを公開しています。

 2015年9月の「海辺の町」公開からこれまでに、今までに無いタイプの防災ゲームとして全国の企業、行政機関、大学、高等学校、中学校、地域団体等から数多くお問い合わせいただき、ご活用いただいています。

ダイレクトロードの特徴

ダイレクトロードには、他の防災ゲームとは異なる特徴があります。

特徴1 現役世代の大人がメインターゲット

 巨大地震が発生した際、実際に災害対応の中心として活躍が期待される「現役世代の大人」の方々に向けた内容です。とは言え、中学校からの引き合いも多くあるため、実施対象は中学2年生以上としています。自らの命は自らで守ることを大前提として、助けられる命に手を差し伸べるのがダイレクトロードです。想定状況が複雑で高度なコミュニケーションが求められ、難易度は高いです。なぜなら、それが実際の災害状況だからです。 小学生や高齢者の方々は「自らの命をいかに守るか」が最優先ですので、ダイレクトロード以外の防災ゲームを選択してあげてください。

特徴2 人材育成教材として使える

 日頃忙しい現役世代の方々が、休日に積極的に地域の防災活動に参加するのは、現実的にはなかなか難しい状況があります。自分の住んでいる地域よりも、職場や学校との繋がりのほうが強いという方も多いのではないでしょうか。そのためダイレクトロードは、職場や学校で使っていただけるように、コミュニケーションや協調性、情報共有、リーダーシップなどを醸成するためのアクティブ・ラーニング型の人材育成教材として使われることを狙って作成しています。防災研修として実施しても、人材育成研修として実施しても、一挙両得のコンテンツです。

特徴3 印刷するだけで無料で使える

 大災害時に自律的に行動し、且つ、協力し合える人たちが増えれば増えるほど、それだけ救われる命も増えます。ダイレクトロードがその一助になれるよう、実施に必要なデータを公開しています。印刷してシナリオどおりに進めれば実施できます。一度体験された方が進行役になれば、よりスムーズに進められますが、進行役向けの講習受講や事前の防災知識は必要ありません。


ダイレクトロードは、防災知識の幅広い普及啓発を目的として、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示-非営利-継承 (CC BY-NC-SA) のもとに提供します。ご自由に使用・転載・複製・改変して構いませんが、改変またはダイレクトロードをベースに別のゲームを作成した場合は、そのデータを誰でも使用できるように公開し、当サイトとの相互リンクをお願いします。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは
クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提供している国際的非営利組…

 非営利目的に限定していますが、教材の印刷代や実施場所を借りるための費用、実施者の交通費などの実費を徴収する事まで否定するものではありません。また、営利の人材育成研修のカリキュラムの一つに使っていただくことも構いません。非営利としているのは、ダイレクトロードで使用するカードを勝手に販売されたりするのを防ぐ意味とお考えください。

特徴4 巨大地震直後の混乱、緊張感、切迫感、助け合いを再現

  ダイレクトロードは「ジグソーメソッド」という手法を用いることで、わずか30枚弱のカードで巨大地震発生直後の混乱状態、緊張感、切迫感、助け合いをリアルに再現します。体験者からは「頭が混乱してパニックを起こしそうになった」「本当に地震直後の町にいるようだった」「焦って手が震えた」「思わず必死になっている自分がいた」「クリアした時の達成感と連帯感がハンパない」「協力が大切ということを心から理解した」「一分一秒が大事だと分かった」「初めて地震を自分のことと思えた」などの感想をいただいています。  

特徴5 ゲームとして純粋に面白い

 体験者からの感想は、多くの場合「・・・だけど、めちゃくちゃ面白かった」と続きます。ありがとうございます。ダイレクトロードはゲームと称しているので、きちんとゲームとして成立するように作成しました。守るべきルールの中で、他者もしくは環境、あるいは自分自身との勝敗を決めるのがゲームです。さらにダイレクトロードはチーム戦です。全員が力を発揮しなければ、絶対にクリアできない仕組みになっています。個人戦よりもクリアした時の喜びは倍増します。ダイレクトロードの面白さはジグソーメソッドから来ています。防災に偏りすぎて面白くないのなら、わざわざゲームにする必要はありません。

ジグソーメソッドとは

 ジグソーメソッド(ジグソー学習法)は、1970年代初頭に心理学者エリオット・アロンソンによって、協同学習を促すことを目的として考案された手法です。最初は、1つの長い文章をいくつかに分けて、それぞれを各自が受け持って学習し、その後、お互いに自分が学習したところを教え合うというものでした。それがジグソーパズルのピースを組み合わせるようであることから、「ジグソーメソッド」と呼ばれています。特徴は、自分が知っていることは他のメンバーは知らず、お互いが知っている内容を教え合って全体像を把握する点です。そのため参加者は、否が応でも全員が主体的に学習の輪に参加します。この手法は現在、多様に形を変え、さまざまな研修などに取り入れられています。職場の研修で、「Aの隣はB」「Bの隣はC」「Bの向かいはD」などのカードから、協力して地図を完成させるコミュニケーションゲームをされたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 ダイレクトロードはジグソーメソッドの持つ特徴が、災害現場に出動した消防隊員が、それぞれ入手した情報から全体の被害状況を把握して、災害対応に繋げていく過程にそっくりなことに着目して開発したゲームです。

ダイレクトロード開発のきっかけ

  実は私も、前職の新人研修で地図を作るゲームを体験した一人です。数年後、消防に転職し、大災害の直後は情報が錯綜することを知りました。(あの時体験した地図ゲームのような防災ゲームがあれば、きっと面白い。でも自分が考えつくことなんて、とっくに誰かが作っているだろう。必要な時が来たら、それを探して使おう)と思っていました。あっという間に時が過ぎたある日、上司から「冬は地域の人達も外で防災訓練するのは寒くて大変やろうから、屋内でできることはないやろか?」と相談されました。その時、初めてネットで調べてみました。ですが、いくら探してもジグソーメソッドを使った防災教材は見つかりませんでした。(見つからないなら作るしかない。どうせなら消防職員だからこそ作れるものを作ろう)と考えました。十数年もの間、頭の中で熟成されていたので、作り始めてみればあっけなく「海辺の町」の原型が出来上がりました。

 その後、同じ署の職員や消防団員さん、職場体験に来る中学生、某名門高校の全生徒、婦人団体の方々、地域の防災リーダーの方々、地元の大学生などにプロトタイプを体験してもらう機会を作っていただいて、たくさんの意見や感想を基に改良を重ねて、1年半ほどかかって公式サイトでの公開に至りました。今でも全国から頂戴するご感想やご意見は、必ず全て目を通しています。そして(なるほど!そうか!)と思うご指摘は、すぐにゲームに反映しています。

ダイレクトロードの欠点

 残念ながら、ダイレクトロードには構造的な欠点があります。その欠点を補うことが、このサイトを開設した理由でもあります。

欠点1 発見者がゲームを体験できない

 発見者とは、ダイレクトロードをネット上で見つけてくれた人です。基本的に神戸市消防局の公式サイトに掲載しているだけのダイレクトロードを見つけ出して、(使ってみよう)と思ってくれたその人が、プレイヤーとしてゲームを体験できる機会が、ほとんどありません。おそらく発見者は、自分はプレイしたことがないゲームの進行役をしなければならなくなります。頼みの綱の開発者からのメールには「シナリオ通りに進めれば実施できます」としか書かれてありません(ウソです、実際はいろいろアドバイスさせていただきます)。
 対策として、このサイトに各シナリオを音声ソフトを使って作成した音声データを掲載しました。完全にゲームをプレイヤーとして体験できる訳ではありませんが、ゲームの流れをイメージしていただくことができると思います。

欠点2 一度しかできない

 ダイレクトロードは、繰り返しおこなうゲームではなく一発勝負のゲームです。どんなに役に立った、面白かったと思っていただいても、ネタバレしてしまうので一度しか体験できません。ですが特に中学校と高校の先生から、(一度しかできないのは勿体ない、繰り返すことで効果は定着する)という意見を多くいただきました。ゲームを一度しかできない構造は変えられなくても、ダイレクトロードにラインナップがあれば、同じ効果が期待できます。少なくとも3種類揃えば、中学校・高校からのご期待には応えられそうです。

欠点3 ブラッシュアップに時間がかかる

 ゲームの原型が出来た段階で、半分位は出来上がりです。原型は頭の中で好き勝手に作るので、私的には、いつも(これで完成!)と思っています。ですが、いざ人に体験してもらうと、必ず修正点や伝わらない箇所が見つかります。ダイレクトロードは同じ人には一度しかできないので、常に違う人に試してもらう必要があります。この過程を延々と繰り返します。それはとても楽しい作業でもあるので、私一人でも常に市民と接することができる担当でいられる間は、なんとか機会を作り出すこともできます。ですが、異動でそうもいかなくなる場合もあります。また、行政機関の公式サイトに掲載するのは「行政機関としてクレームを付けられない」ことが何より最重要であるので、掲載には慎重を要し、とてもとても長い時間がかかります。
 そのため、このサイトに数種類のプロトタイプを公開しました。ダイレクトロードに興味を持っていただいた全国の有志の皆さまに試していただき、結果をフィードバックしてもらい、この期間を少しでも短くするのが個人サイト開設の一番の目的です。

欠点4 カードの準備が煩わしい

 ダイレクトロードは、どのゲームも1チームにつき30枚弱のカードが必要です。その他にも地図や説明書きなども必要です。基本的にチーム分を印刷してもらえばいいのですが、カードは名刺大の大きさに切り分ける必要があります。2,3チームで実施する分にはいいかもしれませんが、中学校や高校などでは全校一斉に実施する学校もあります。そうなると、カードの準備だけでも相当な手間になります。
 今のところ、カードの準備問題については良い解決策がありません。「頑張って準備して、せめて来年も使えるように、ラミネートして保管しておいてくださいね」程度のことしか言えません。私が公務員という立場であることを踏まえて、どなたか良いアイディアをお持ちでしたら、ぜひアドバイスをお願いします。

ダイレクトロード ヘキサゴン

 ダイレクトロードのロゴマークは六角形です。この形には2つの意味を込めています。
 1つ目は、ダイレクトロードが消防由来のゲームであることです。 消防車両や職員の帽子に付いている「消防章」は、雪の結晶のような六角形をしています。でも、そのままではあまりにも仰々しいので、未来の消防章をイメージした形にしてみました。
 2つ目は、ダイレクトロードが基本6人1組となって力を合わせるゲームであることです。そして、1つの六角形が隣合う六角形と繋がり、ネットのように広がって地域を覆う防災の力になってほしい、という意味を込めています。

ダイレクトロード関連受賞歴等

2015 神戸市消防局 神戸消防・技術フロンティア制度 最優秀賞

2017 一般財団法人全国消防協会 消防機器の改良及び開発並びに消防に関する論文 秀賞

2017 一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会 ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞) 優秀賞

2023 総務省消防庁「自主防災組織の手引」に掲載開始

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